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歓喜に満ちた道後山駅開通
―地方未曾有の賑い―

地理的に恵まれなかった県北比婆の僻地が、待望久しい三神線鉄道全通によって文化の第一歩に雄々しく登場した、光輝ある交通史上の第一頁(ページ)が去る10月10日の全通式によって、記録された歓喜興奮がまださめきらぬ11月21日、三神線道後山駅が営業開始の喜びの譜を奏した。午前五時四十七分備後西城駅発上り列車は、汽笛の音もいと朗らかに、新設道後山駅に辷り(すべり)込んだのをトップに間断なく旅客・貨車混合車の着発の景気を煽り、縁喜をかついでこの日を待ち受けた木炭・木材・俵米など堆く駅頭に、これらを満載する初荷景気も上々吉と幸先を祝えば、旅客車もおとらじと超満員の混雑を極める豪勢さ。地元の比婆郡八鉾村では開業祝賀協賛会を組織し、駅前假(かり)建築バラックにおいて盛大な開通祝賀式を挙行した。道後山をはじめ連嶺一帯はすっかり冬姿となった中にも紅葉を残綴して晴れの開業を寿ほぐ(ことほぐ・祝賀する)かのごとく、新生道後山駅行進譜も朗らかに旗が駅を村を流れて喜びの絶頂に達した。参列者300余名で正午開式、

・国家合唱
・前田村長開式の辞
・米子建設事務所長(沼田技師代読)、広島鉄道局長(代読)、野上県会議員、西田庄原警察署長、渡辺美古登村村長、織田道後山駅設置期成同盟会長、他政民の来賓祝辞
・肥田代議士、永山代議士、宮田武義氏ほか数十通の祝電披露
・前田村長閉式の辞

で式を終わり。直ちに祝賀宴に移り盛会を極めた。
なお、式に先立って早朝から花火を打ち上げ、新駅はまばゆいばかりに装飾を施し、植木宿場は幔幕を飾り、小学児童、男女青年団員らは本社寄贈の旗行列、その他郷土余興でさんざめき、万国旗の掲揚、祝開通のビラは各戸軒頭にひるがえり、駅路付近から植木宿場へ至る路傍一帯は、露店商人で埋まって本社小旗が渦の壮観を描き、祝賀景気百パーセント高原停車場の多幸をいやが上に慶祝した。

中国新聞1936年(昭和11年)11月23日付

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