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希望に満ちた東城の将来
3県間交通上の枢要にあたる地

広島県比婆郡東城町は県の東北隅にあって岡山県に近接し従来岡山県との交通の要衝に位しておったが今回三神鉄道の開通によって一層岡山県ならびに鳥取県伯耆地方との交通上重要地点となったわけである、東城川の流れに沿う市街地で戸数約1,000、人口5,000を算し比婆郡における商業地として発達しておる、物産としては古来地方一般に砂鉄の採取さかんにて往時同地方には諸藩侯経営その他の製鉄所も多数あったが明治中葉以後洋鉄の輸入により廃滅に帰し、さらに彼の世界大戦乱の当時鉄価の暴騰のため再興せられたが、また忽ちにして潰れ、今はただわずかに隣村田森村にて三巴製鉄合資会社の工場にて往昔砂鉄製造によって生じた鉄滓を原料として一か年約3,000トンの特殊の銑鉄を製造して八幡製鉄所に納入しているのが地方産業界に異彩を放っている、また酒・醤油の製造も盛大で多く他地方(岡山・鳥取・島根各県の隣接地方)へ移出しているなど郡東部の集散地として市況賑盛である、交通はこの地を起点として乗合自動車が、三神線神代駅(岡山県阿哲郡上市村)芸備線備後庄原駅(比婆郡庄原町)山陽線福山駅などに連絡するほか備後北部の各重要郡邑へはほとんど連絡しているのであるが今回地方多年の熱望であった三神線鉄道がこの地に開通したのでわが国の五大名峡の一つで名勝遊覧地である帝釈峡(東城駅から約1里半)の東の玄関口として広島以西本邦西部から同峡にいたる芸備線鉄道庄原駅とともに広島県の宝庫である比婆郡に入る東西の二大門戸として今後の東城町の産業・交通の上に一大躍進を見ることは想像にあまりある、金融機関としては広島市の芸備銀行東城支店・岡山県津山市の山陽銀行(近く岡山市の第一合同銀行と合併して中国銀行となる)東城出張所・東城信用組合などがある、学校は小学校のほか県立東城高等女学校があり、電灯は東城水力電気株式会社が供給している、会社はもと地方資本家の経営であったが現在では附近の名勝地として問題となった帝釈峡に堰堤を築いて一大発電所を設けて阪神方面に送電している山陽中央水電株式会社の経営となっている、東城警察署は東城・久代・帝釈・八幡・小奴可・田森の6町村を管轄しており、庄原区裁判所東城出張所・東城郵便局・広島県穀物検査所東城出張所などの官公衙がある
中国新聞1930年(昭和5年)11月26日付
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